調査準備,自炊

 ビタに来て1ヶ月が過ぎ,少しずつ調査の準備ができてきました.まずNapier stuntの実験に使う50cm四方,高さ90cmの木製ケージ(虫かご)を50個ほど,町の大工に作ってもらいました.研究所の構内にも作業所があるのですが,ここで頼むと高いので外で頼んだわけです.ところが,これが日本でやるようにはいかなくて,大工を呼んで一緒に材料のリストを検討して見積もりを出してもらうのに1日,大工と一緒に町の材木屋をまわって材木を手に入れるのに1日,買った材木にカンナをかけてもらうのに1日,それを研究所のトラックで大工の家まで運ぶのに一日,ケージの四方に張るナイロンメッシュをキスムに買いに行くのに1日,というような案配でした.その後もちょくちょく様子を見に行ったりして,大工のサイラスとは仲良くなった気がします.製作が始まってから10日ほどが過ぎ,そろそろ完成みたいです.


 もうひとつの研究テーマである,トウモロコシ畑での野外実験の準備も進めています.前回の野外実験は,ビタから100kmほど南西のランブウェ川流域にあるウィガという村でやりました.ここが実にいい雰囲気の田舎で,キリンがいたりして好きな場所ですが,今回はここをあきらめ,ビタの研究所内にある試験圃場でやることにしました.というのは,ランブウェは道路の状態が最悪という欠点があって,スコールが降るとあっという間に道が川になります.朝方ウィガに向かうと,マタツ(小型の乗り合いバス)のタイヤが4つとも道に埋まっていて,客を満載したまま夜を明かしたらしいのにすれ違ったりして,ああいうのはちょっと勘弁してもらいたいわけです.ケニアは,今年は例年以上に雨が多いそうなので,おそらく移動だけで大変だろうし,頻繁に通うのは不可能な気がします.そこで,味気ないですが自転車で通えるビタの研究所内で我慢することにしました.さて,試験圃場ですが,まずは調査予定地の草刈りをしてもらって,そこに生えている500本のクワの木を掘り出してもらうことから始まりました.このクワの木というのは,ナイロビにいる研究者がビタの試験圃場に植えたそうで,その後まったく管理されずにブッシュとなって,圃場のマネージャーは困っていたようです.その場所を僕が管理する理由もないわけですが,まあ礼金みたいなものかと思い直し,15人ほどにお願いして全部掘り出してもらいました.4,5日間で掘り出しが終了して,ようやく昨日,1回目の耕耘がすみました.この間にも,種まきに使う杭やロープを作ってもらったり,ネピアグラスの鉢植えを準備してもらったり,実験に使う植物の種を送ってもらったり,今のところは殆ど他人にやってもらっています.おかげでまだ日に焼けず体重も落ちていないはずです.最近は作業の段取りをつけるのと,調査の計画を立てるため,ほとんど部屋のなかに籠っています.


 久しぶりの自炊生活はなかなか楽しくもあり,焼魚や煮魚や揚げ魚や干し魚などを堪能しています.「オメナ」という干した小魚と,市場で売っている名前のわからない葉っぱを一緒に炒めるとなかなかオツなのがわかり,最近はこれにはまっています.自分の料理の基本スタイルは,何でも刻んで炒めてしまうので,ここの食材でもなんとかなるようです.そういえば,ビタの市場は1年前よりも少し大きくなった気がします.アボガドとかサツマイモなど,以前見かけなかった食材がコンスタントに売られています.この前は,りっぱなピーマンが売られていて驚きました.


それでは,今回はこの辺で.



野外実験の予定地にはびこるクワの木を掘り出してもらうことから準備が始まった.日本だったら,この時点で気力が萎えそうな状況.



クワの木を掘り出した後,トラクター(遠くに見える)で耕耘してもらった.手前のソルガム畑をつぶしてしまうのはもったいないが仕方ない.



これだけ風景のゴージャスな物干し場があるアパートは,なかなか無いですよね.ビタの天気に感動してしまうのは,これまで日本海側に15年も住んでいたからかもしれないけれど.



ケージ製作中の写真を撮ると言ったら,あわてて片付けたり道具をとりにいったりしてドタバタしていた.結局カナヅチでトントンやっているところを撮ったのだが,真面目な写真で面白くないので載せません・・・



ある日の夕食.揚げたナイルパーチをまとめ買いして,冷凍庫に取っておくと忙しい時は便利.