カーン博士

僕を受け入れてくれたプロジェクトでは,イネ科草本を使ったトウモロコシの害虫(ズイムシ,英語ではstemborer)の防除に取り組んでいます.ズイムシ誘因性の高いイネ科草本をトウモロコシ畑の周囲に植え,トウモロコシの被害を減らすというものです.プロジェクトリーダーであるKhan博士は,50代前半くらいのインド人です.ギャツビー財団やロックフェラー財団などから資金を得て,スケールの大きなプロジェクトをいくつも立ち上げ,植物や昆虫の研究者ばかりか社会経済学の専門家とも協力して,多くの業績をあげています.さぞかしギラギラした人なのであろう,と,初めて会ったときは緊張しましたが,予想に反してKhan博士はすらっとした風貌の穏やかな方で,終始ニコリともせず訛りのない英語で静かに話しました.研究の話で突っ込まれるに違いないと覚悟していたのですが,話題はもっぱら生活の話で,車の調子はどうだとか,タイヤは減っていないかとか,部屋にカーテンはあるのかとか,インターネットはつながったのかとか,そんな話ばかりでした.Kisumuに買い出しに行きたいと言ったところ,まめまめしく運転手を手配してくださり,牛乳を買うのかと聞くのでそのつもりだと言ったら,それならクーラーボックスも買いなさい,そうしないと悪くなっちゃうだろなどと真面目にアドバイスしてくれるのでした.どうもまだよくつかめない先生ですが,こういう事を気遣ってくれるのだから,きっといい人に違いない,と判断しています(翌日,運転手のサリム君に聞いたら,「カーンさんはよく笑うしジョークも言うよ」との事でした).
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カーン氏とは関係ないが,キスムから返るフェリー乗り場でテントウムシを採っているところ.子ども達が手伝ってくれた.